理想恋愛屋
「ちょっと、みんなっ!」

 制止をしたオレに気づいたのは兄。

つかつかと歩み寄って、こっそり耳元で囁く。


「葵さん。相手は女子校生、くれぐれも健全なお付き合いをお願いしますね?」


「な、ななな、ナニを言って……!」


 オレの反論は空回りをして、そそくさと萌の下へと戻ってしまった兄。


そもそもケンゼンなオツキアイだなんてする間柄ではない!



 そんな精一杯の訂正も虚しく、ただオレは部屋に引き返していく四人の背中を見つめていた。




「……で、どうするの?」


 誇らしげに痛い視線をぶつけてくる彼女に、オレは言葉が出なかった。






 どんなにオレが喚いたところで、この中で聞く耳を持つ人がいるのだろうか。



 反語。

いや、いるわけがない―……。





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