理想恋愛屋
 そんな思いを馳せているのにも関わらず、

「今まで散々人の身体触っといて、よくもまあ、そんな態度がとれるわねぇ?」

 と、まあ、見事に感心を打ち砕くような横柄な態度の彼女。


「誤解を招くような言い方はするな!」

 すべて事故だ!無実だ!!

こぼさないように慎重に振り向きながら反論するも、彼女はいたって余裕。


「事実は事実!」

 ふふん、と淡い毛先を遊ばせるように、髪を払う。


 どうしてこんなに減らず口なのか、とにらみ合っていたそのときだ。


「あのね、お取り込み中悪いんだけど……」


 申し訳なさそうな萌の言葉。

慌てて訂正を促す。

「全然、取り込んでないから!」
「全然、取り込んでないわよ!」


 む、またしてもこの女!

オレと彼女の言葉は、偶然なのか何なのか、語尾以外タイミングも揃ってしまった。


 そして、話を進めたいのか、やんわり空気を変えるように萌ははにかむ。


「今日は、お願いがあって来たの」


「お願い?」


 思わず彼女とも顔を見合わせ、きょとんとしてしまう。



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