理想恋愛屋
 戸惑うオレたちを押し切るように彼女は詰め寄ってくる。

「ね、あたしに任せてよ!」

 嬉しそうな彼女は、さながらオモチャを見つけた子供で、目が一段と輝いている。


「だーかーらーっ、なんでお前が決定権もってんだよ!」

 なんとか彼女のペースにならないように押し返すも。

至極当然のように、彼女は笑って答える。


「楽しいからに決まってるじゃない!」


 ぽかん、とあいた口がふさがらない。

こういうときはどうすればいいのか、未だオレにはさっぱりわからない。


そして獲物を見つけたかのように、ぐっと拳に力をいれ、二の腕を見せた彼女。


「そーんな生意気いうコドモは、一度こてんぱんにやっつけないと治んないのよ」


 お前がそれを言うのかよ!

というオレの心の叫びを汲み取ってくれるわけもなく。


 少し細めた瞳と目が合う。


「何か言って?」


 できることといったら。


「イイエ、ナニモ……」


 彼女に従うことだろうか?






 ため息が尽きない今日この頃。



 まさかこれが、新たな試練になるなんて。

オレはこれっぽっちも予想だにしていなかった───




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