理想恋愛屋
 一方で真に受けたように、あからさまに落ち込む萌。

「まあまあ、相手はコドモなんだし……」

 とフォローに入った俺に対し、


「オジサンさぁ、空気よみなよ〜。都そこまでコドモじゃないし」

 まるで外国人張りに肩をすくめて見せる生意気小娘。

ぐぬぬ、と怒りを耐えているのが伝わっているのか、それをも楽しむかのように不敵に笑う。


 くっそー!! バカにしやがって!!

そう思ったときだった。



「まあ、そりゃそうよね」

 と、良くも悪くも臨戦態勢に入りそうだったオレにブレーキをかけたような彼女の言葉。


 ってか、納得すんなよ!!


「あのなァ……!」

「だってオトナはみんな馬鹿だもの」


 なんだか、グサリと胸に刺さる。


 オレからしてみれば、彼女だって十分コドモの範囲なのに、この少女からしてみれば、大人の範囲。

彼女は、そういうあやふやな時期を歩いているのだ。


だからこそ、オレにはない感性をもっているのかもしれない──なんて、少しだけ考え直そうとしているときだった。


「でもね、こんな葵でも、アンタよりかは生きてんのよ」

 少しピリリとしたドスをも感じさせる彼女の言葉に、この都という少女も口をつぐむ。
 
そして、うつむいた彼女はポツリとつぶやく。


「あんたたちに、ナニがわかるのよ」


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