理想恋愛屋
「アンタねえ、仮にも葵チャンに助けてもらっておいて……!」

 さすがの秋さんも見過ごせなかったようだ。

「いいよ、秋さん。それに萌も」

「でも……っ」

 大の大人が揃ってコドモ一人に対し、ひどい形相で囲っているのだ。

それに、なんといっても。


「いいんだ、慣れてるし」

 と、チラリと彼女へ見やる。やはりバツが悪そうにしていたのだけど。

そのまま膝に力をいれ立ち上がる。


「怪我、ないな?」

 プンとむくれた都の頭をぽんと叩いて、一同を仕切りなおす。


「そろそろ本当に準備しよう。明日の本番に間に合わなくなる」

「葵さん……」

 さすがに申し訳なさそうな園長に、オレは手で制した。

チラリと視線をずらすと、口を一文字に結んだ都。



「いいか、チビッコ。明日、ちゃんと見ろよ?」



 コレできっと、通じるはずなんだ。




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