理想恋愛屋
「君はやはり優しい人だね。でも、おうちの人に心配かけてはいけないよ」

 そういってロミエットを諭すジュリオ。

二人はロミエットの屋敷に戻り、もう一度姉と母と話すことにした。



 こうして劇もとうとうクライマックスを迎える。

オレたちもあと一踏ん張りということもあり、ヤケに力が入っていた。


 ロミエットの母は泣き崩れ、自分のしたことを省みていた。


「私はあなたたちの何を見ていたのか、申し訳ないことをした」

 園長の迫真の演技に、オレも思わず胸が締め付けられたのを覚えている。


 そしてその様子を見ていた姉も、突き動かされたように頭を下げ、

「最初はそんなつもりじゃなかった……でも、本当に悪いことをしてしまった」

 後悔するように肩を落とす姉は、きちんと謝る、と約束してくれたのだ。




「そして、ジュリオとロミエットは、これからもずっと仲良く暮らしたのです……めでたしめでたし」

 ナレーションが静かに響くと、客席からは大きな拍手が沸いた。

その中で都は微動だにせず、舞台を見つめてきた。


 にこやかな団員たちに贈られる賞賛の声と拍手に包まれる中、オレは都を見つめた。




 何かが伝わってくれるといい。

ただひたすら、そう願った。


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