理想恋愛屋
2.公認の刺客
毎日十五時に、彼女の通う高校へ車でお迎えという業務が追加されたオレは、仕事の合間を縫って時間を作っている。
あの多忙極める秋も終わりを見せて、ようやく吐く息も白く染められ始めた季節。
「ああ、やっぱりアロハ家のアイスは格別ね」
とご満悦な表情で、勝手に冷凍庫を占領しているイチゴレンニュウアロエバニラという不可思議な味を堪能している彼女。
オレの視線に気づくやいなや、
「……なに、あげないわよ?」
プイと顔を背ける始末。即座に、反論。
「いらねえよ!」
別に簡単に想像できない味を食べたいとは思っていない。
が、そんな微塵の優しさも感じられない言葉に、もうすこし労わるとか感謝するとかしてほしい。
と思うのは、望みすぎだろうか。
「車で迎えがあると、ランチ限定に間に合うのよねぇ」
依頼とはいえ、彼女のためにわざわざ車を出しているのに、まさかの便利屋発言。
もうどうにでもなれ、と自暴自棄だ。
「あ、今日は早く帰らないといけないのよ。ヨロシク~」
足をパタつかせてまた一口頬張る姿に、「ハイハイ」と生返事を返す。
そうして珍しく一日電話が鳴らない事務所を、十七時に切り上げて彼女を家に帰す。
最近、目にしたのだが、彼女の邸宅はオレの想像を超えていた。
さすがに門から玄関まで車とはいかないものの、赤レンガ造りの趣のある門構えの奥には丁寧に手を加えられた芝がひろがる庭。
大人の身長の二倍はあるであろう高い柵に沿うように並ぶのは、春が待ち遠しくなるような花壇。
それらを圧巻するようにたたずむ品のある白いモルタルの二階建ては、面積に似合わずこじんまりとして見えるが、実際は大豪邸だ。
「今日もご苦労様、じゃあね」
.
あの多忙極める秋も終わりを見せて、ようやく吐く息も白く染められ始めた季節。
「ああ、やっぱりアロハ家のアイスは格別ね」
とご満悦な表情で、勝手に冷凍庫を占領しているイチゴレンニュウアロエバニラという不可思議な味を堪能している彼女。
オレの視線に気づくやいなや、
「……なに、あげないわよ?」
プイと顔を背ける始末。即座に、反論。
「いらねえよ!」
別に簡単に想像できない味を食べたいとは思っていない。
が、そんな微塵の優しさも感じられない言葉に、もうすこし労わるとか感謝するとかしてほしい。
と思うのは、望みすぎだろうか。
「車で迎えがあると、ランチ限定に間に合うのよねぇ」
依頼とはいえ、彼女のためにわざわざ車を出しているのに、まさかの便利屋発言。
もうどうにでもなれ、と自暴自棄だ。
「あ、今日は早く帰らないといけないのよ。ヨロシク~」
足をパタつかせてまた一口頬張る姿に、「ハイハイ」と生返事を返す。
そうして珍しく一日電話が鳴らない事務所を、十七時に切り上げて彼女を家に帰す。
最近、目にしたのだが、彼女の邸宅はオレの想像を超えていた。
さすがに門から玄関まで車とはいかないものの、赤レンガ造りの趣のある門構えの奥には丁寧に手を加えられた芝がひろがる庭。
大人の身長の二倍はあるであろう高い柵に沿うように並ぶのは、春が待ち遠しくなるような花壇。
それらを圧巻するようにたたずむ品のある白いモルタルの二階建ては、面積に似合わずこじんまりとして見えるが、実際は大豪邸だ。
「今日もご苦労様、じゃあね」
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