理想恋愛屋

「遥姫、ボクは認めてもらったんだよ。……お祖父様に」


 オジイ、サマ──……?


 エセ王子は笑顔で口にしたその言葉を、オレは理解するのに時間がかかっていた。

いや、認めたくなかったのかもしれない。



 これから訪れるであろう、過去最大の受難に。


「改めて自己紹介しとこうか」


 老人は品のある黒い帽子を外し、にこやかな笑顔で一人置いてけぼりなオレをしっかり捕らえる。

その瞳の奥にある眼光に、彼女と同じものを見た気がした。



「一ノ瀬貴義(イチノセ タカヨシ)、イチノセの会長や。そして……」


 言うまでもない、この話の流れ。


聞くんじゃなかった、などという後悔は、やはり先に立ってはくれず。



「あたしのおじいちゃん、よ」




 オレはトンデモナイ敵を作ってしまったのかもしれない。

.
< 273 / 307 >

この作品をシェア

pagetop