理想恋愛屋
「遥姫、ボクは認めてもらったんだよ。……お祖父様に」
オジイ、サマ──……?
エセ王子は笑顔で口にしたその言葉を、オレは理解するのに時間がかかっていた。
いや、認めたくなかったのかもしれない。
これから訪れるであろう、過去最大の受難に。
「改めて自己紹介しとこうか」
老人は品のある黒い帽子を外し、にこやかな笑顔で一人置いてけぼりなオレをしっかり捕らえる。
その瞳の奥にある眼光に、彼女と同じものを見た気がした。
「一ノ瀬貴義(イチノセ タカヨシ)、イチノセの会長や。そして……」
言うまでもない、この話の流れ。
聞くんじゃなかった、などという後悔は、やはり先に立ってはくれず。
「あたしのおじいちゃん、よ」
オレはトンデモナイ敵を作ってしまったのかもしれない。
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