理想恋愛屋

3.愛の測量勝負

 ロイヤルガーデンホテルといわれる、国内屈指でもある高級ホテルのロビーに来ていた。

クロークも人が溢れていてその規模が尋常じゃないことが、ひしひしと伝わってくる。


「おいおい、こんなにいるのかよ……」

 これから行われる婚約パーティもさることながら、控えているオレたちの“勝負”に緊張と焦りを感じ始めていた。




 その“勝負”というのは、今から一週間ほど前に貴義氏が事務所に現れた日のことだ。

彼女が自分の生い立ちを初めて口にし、オレは少なからず動揺していた。

それなのに、飽きもせずあのエセ王子が一人でやってきた。


「恋愛屋さん、ちょっといいですか?」

「こ、虎太郎くん……」

 彼女を学校へ送っていき、一息ついてムリヤリ頭を切り替えて仕事に向かったというのに。

しかし意外にも神妙な面持ちに、どんなときもニコニコ笑っているいつもの姿が嘘のようで、話を聞かないわけにはいかなくなる。


「このまま同じことしても、ずっと平行線だと思うんです。ボクも恋愛屋さんも諦めないですよね?」

 当然、話題は彼女についてだ。


「だからボクと勝負してもらえませんか?それで負けたら身を引いて欲しいんです」

「ちょっと待てよ、そこにアイツのキモチが──」


 諦める、という選択肢は今のオレには出来ない。

オレは仕事とはいえ、彼女の想いを尊重したいからだ。


けれど、いつかはどういう形にしろ、決着はつけなくてはならないのも解っていた。


「遥姫はお祖父様と約束があるんです。“なんでもやる”ってね」


 それはオレだって本人から確かに聞いた。

でも、それは俺たちが決めていいことではないはずだ。


「じゃあ遥姫にも聞いてみます?勝負で決めるって。だけどそんなことを聞いたらどうすると思いますか?」


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