理想恋愛屋

4.響け!ハリセン

「じゃあ、そこで待ってろよ?」

 こっくり頷いたのを確認して、バタンと助手席のドアを閉める。

 もう一度、あの砂利道を通って料亭に入った。


 オレたちが隠れていた部屋を通り越して、その隣の障子が張られた戸を引く。

「葵」

「葵さん」

 萌と兄は、やっぱり部屋に戻ってきていた。

向かい合う二人の間をとるように座る。


「まあ、色々ありましたが、とりあえず先に帰るんで」

 オレは簡単に挨拶すると、また立ち上がる。

「葵さんっ」

「……あなたたちが選んだことでしょう?」

 兄の言いたいことは分かった。

 彼女がどうしているのか。

だけど、今言ったところで解決できる話じゃないし。
何よりも傷口がより広がるだけだ。

それは、オレにも言えることかもしれないけど。

 チラリと萌を見たら、口をきゅっと結んでいた。

もう、バレバレだった。


「朗報お待ちしております」

 ペコリと頭を下げて、キレイにまとめた。



 ──つもりだった。

トントントンと足音が廊下に響き渡り、オレの背筋に若干悪寒のようなものが走る。


 いや、まさか……な。


 ゆっくり頭をあげると、背後からダンッと戸が勢いよく開かれた。

振り向くとそこには……


「げ」

 白いタイトのシャツにすらっとしたジーンズをはきこなす、彼女。


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