理想恋愛屋
間髪入れたその言葉に、オレは声も出ない。
それすらも見通していたのか、前を向いたまま貴義氏は続けた。
「隠せてると思ってんのやったら、調べたりせぇへんわ」
「じゃあ、なんで……」
しかし貴義氏はオレの問いに答えず、少しオレに振り返るようにはにかむだけだった。
「遅かったですね」
厨房の一番奥で、シェフたちと同じ格好のエセ王子が待ちかまえていた。
その姿は妙に板についていて、オレはゴクリとつばを飲み込む。
「兄ちゃん、二言は許さへんよ?」
そんな鋭い重圧に必死に絶えて、オレは苦し紛れに笑ってみせる。
「もちろんです」
「ボクもです」
後に続いたエセ王子も、それなりの覚悟があるみたいだ。
「では、取りかかってくれ」
一か八かの人生最大の大勝負。
彼女への“愛”を賭けた戦いのゴングは、静かに鳴り響いた──……
.
それすらも見通していたのか、前を向いたまま貴義氏は続けた。
「隠せてると思ってんのやったら、調べたりせぇへんわ」
「じゃあ、なんで……」
しかし貴義氏はオレの問いに答えず、少しオレに振り返るようにはにかむだけだった。
「遅かったですね」
厨房の一番奥で、シェフたちと同じ格好のエセ王子が待ちかまえていた。
その姿は妙に板についていて、オレはゴクリとつばを飲み込む。
「兄ちゃん、二言は許さへんよ?」
そんな鋭い重圧に必死に絶えて、オレは苦し紛れに笑ってみせる。
「もちろんです」
「ボクもです」
後に続いたエセ王子も、それなりの覚悟があるみたいだ。
「では、取りかかってくれ」
一か八かの人生最大の大勝負。
彼女への“愛”を賭けた戦いのゴングは、静かに鳴り響いた──……
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