理想恋愛屋
「あの、ちょいと……?なんでまた絶叫系なんスか……?」

 顔が引きつってるのは承知の上だ。

差し障りないように、このゴーイングマイウェイな姫に尋ねる。


 彼女が指したのは、今アトラクションの中でも人気ナンバーワンを誇る絶叫マシーン。

開発が進み、一時期衰退を経験したこの遊園地の一躍目玉ともなった超巨大ジェットコースターだ。


 いや、まだ絶叫系はいいんだ。

オレも嫌いじゃないんだが、さすがの体力気力ともに限界だ。

 もうちょっと可愛らしくメリーゴーランドとかボートに乗って園内鑑賞とかにしてはくれないものか。


 そんな彼女は無情にも。

「あたしが乗りたいから」

 ほらね。聞いたオレがいけないんだ。


「だって、まだ時間あるんだもん」

 ちらりと時計に目をやる彼女。

「時間?」

 思っても見なかった彼女の続いた言葉に首をかしげる。

 たしか今日のパレードは午後からのはずだ。今はまだ、お昼すら迎えていないのに。


「ってことで!」

 むんずとオレの腕をがっちりつかむ彼女が浮かべるのは、不敵の笑み。



「ま、まってぇぇえっ!」


 その叫び声に彼女がぱっと顔をあげる。



 いや、いまのはオレじゃない。

まったくもって、同じ思いではあるけど。


 キラリと眼光がオレを刺してきたので、ブンブンと無言で首を振る。


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