理想恋愛屋
「ハルキ」

「お兄ちゃんは黙ってて!」

 ピシャリと遮ると、彼女はオレに詰め寄ってきた。

大きな瞳をくるくるとまわして見られていた。


 ってか、オレが品評されるのかよ!

彼女の向こうにいる兄に助けを求めたけど、肩をすくめて見せるだけだ。


 お前の妹だろ!?

っていうツッコミはぐっと堪えた。


「お兄ちゃんと同い年なのに、随分貧相な身なりね?」

 腰に手を当てて、呆れも混じりながら評価された。


 おいおい、これでも海外ブランドのスーツだぜ?

……かなり昔に奮発して買ったものだけど。


「とりあえず、説明しますから」

 なんだか情けなさが重くのしかかるオレは二人にソファに腰掛けるよう促す。

今度こそはおとなしく従う彼女。

もちろん、兄の腕に絡み付いてるのはいうまでもない。


「これに書いてください」

 デスクから取り出したまっさらな調査票をバインダーに挟んで彼に手渡す。

スラスラと流れるように書く兄の姿を彼女は興味津々に覗き込んでいた。



 そもそも、この『理想恋愛屋』は恋を売る商売だ。

いわゆる結婚相談所や恋愛相談所の類だと思ってくれればいい。

合コンもするし、年齢や職業を制限したパーティーも催したりもする。

更に、告白の手伝いとかもしたりすることもあるんだから。



「ふーん」

 書き終わった調査票を受け取ると、対して興味もなさそうに彼女はアイスを平らげた。

あんなに一気に食べたら頭痛がするはずなのに。

ケロっとしている彼女を、ある種尊敬してしまったオレなのだった。


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