理想恋愛屋

2.オトメの仕事

 辺りはオレンジ色の日差しがビルの窓を反射して、一層日が落ちてきたことを主張し始めていた。

時間がないため、早速オレたちはモデルを探しに人通りの多い、駅前の小さな噴水広場に来ていた。


 念のため、ココに来る前に事務所で今回女の子に着てもらう服を見たのが……。

男のオレからしたらよく理解できない、下着というよりドレスのようだった。

白と黒の裾の長いデザインで、人気デザイナーとのコラボレーションらしく、コンセプトがあった。

「『大切な人と過ごす夜』?」

 写真には、ネグリジェのような妖艶さもなく、かといって淡白しすぎてないそれは、ふわふわしたワンピースが写っていた。


『恋人はもちろん、友人と楽しいひとときを。 女の子は眠るときでもオシャレがしたい!』

と手書きで書かれた付箋が張り付いている。


 寝るときにまではさすがに……っていうのはオレの個人的意見だ。


「早乙女サン、どういう基準で選べばいいんですかー?」

 オレは噴水前の段差に腰掛けながら、すでに明後日を見始めていた。


「スタイルがよくてー、できれば髪は長めでー」

 髪の長さまでこだわるのか?

「あとは、家庭的な子が……」


 ……はい?


隣をみると、早乙女サンは少し頬を赤らめている。


「いやいや、早乙女サンの好みじゃなかいから!」

「あ、そうでしたね!モデルのことですよねっ」

 照れくさそうに頭をかいているが、どこまで本気なのかさっぱりわからない。

一緒にいるだけでため息の連発だ。


「……葵?」

 いかに逃げ出そうか本気で悩み始めたとき、不意に呼ばれる。

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