理想恋愛屋
「ぜひお願いします!」

 彼の意気だった声が噴水広場に響く。

 今にもハートを飛ばしそうな雰囲気の兄と萌も、きょとんと見つめていた。

 オレの背後を。



 ……嫌な予感の連続だ。

神様は、いつまでオレに試練を与え続けるのだろうか?


 もう一度ゆっくり顔だけ振り向くと、弱点を克服したかのように彼が彼女の手をぎゅっと握っていた。

 これから聞くことになる、初めて強い意志を感じる彼の言葉は、オレを焦りという名のモロッコ列車に強制乗車させた。



「お願いします!モデル、やってください!」

 今まで見たこともない強い意志を感じるまなざしを、彼女に送っていた。


「あ、あたし……?」

 キョトンとする彼女は握られた手を払うわけでもない。

いつも強引にでも自分を貫くアノ彼女が、戸惑っているのだ。


 ……どうしてだろうか、こんなに胸騒ぎがするのは。


「ちょっと、早乙女さん!」


 気がつけば、彼の肩を掴んで止めにはいっていた。

ぐらりとよろめいた彼は、オレを見てビックリしていた。


「な、何言ってるんですかっ!?」

「え?なにって……スカウト?」

 さも当然のように、彼はあっさり応える。

慌ててるオレがおかしいとさえ言いそうだ。


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