理想恋愛屋
3.最強?プリンセス
アップテンポな曲にあわせて赤や青のライトが散乱する。
中央に細長く設置されたステージに、決して低くはないオレと同じくらいの身長をもった女の子たちが歩いていく。
「すげぇなぁ……」
思わず零れた感想。
こういったイベントを見るのは初めてだし、ましてや裏側を目の当たりするのも当然未知なる体験だ。
いわれていた通り控え室に向かうのだが、それまでの廊下はさまざまな服やダンボール、駆け抜ける人たちとすれ違う。
そんな準備中で慌しい雰囲気は、関係のないオレすらも焦らせた。
キョロキョロしながら、小さな見取り図を片手に目的地に向かっていたときだ。
「葵さーん!」
背後から最近じゃ聞きなれた声が響いてくる。
振り向くと焦ったように黒いスタッフTシャツを着た彼が、丸めたノートを握り締めて走ってくる。
「早乙女さん」
「困りますよ~!」
今回の依頼者である彼が、呆れて腰に手を当てていた。
そして手に持っていたノートをばっと広げてオレに突きつけてくる。
「名簿に『理想恋愛屋』なんて書かれても困ります!」
それはこの会場の裏口に入る際、前もってもらっていたスタッフカードのナンバーと名前を書く名簿だった。
「きちんと名前、書いてくださいよ!」
こんな強気の彼は、半月前とは大分イメージが違う。
いや、オレがオトコだからなのかもしれないが。
だけど、もう一つひっかかる。
「……何を、書けと?」
じわり、じわりと嫌な汗がまた一つ背中を流れる。
「なにって……名前、ですけど?」
小首をかしげる彼。
ほら、といわんばかりにポケットからボールペンを出して、ノートと一緒に差し出してくる。
中央に細長く設置されたステージに、決して低くはないオレと同じくらいの身長をもった女の子たちが歩いていく。
「すげぇなぁ……」
思わず零れた感想。
こういったイベントを見るのは初めてだし、ましてや裏側を目の当たりするのも当然未知なる体験だ。
いわれていた通り控え室に向かうのだが、それまでの廊下はさまざまな服やダンボール、駆け抜ける人たちとすれ違う。
そんな準備中で慌しい雰囲気は、関係のないオレすらも焦らせた。
キョロキョロしながら、小さな見取り図を片手に目的地に向かっていたときだ。
「葵さーん!」
背後から最近じゃ聞きなれた声が響いてくる。
振り向くと焦ったように黒いスタッフTシャツを着た彼が、丸めたノートを握り締めて走ってくる。
「早乙女さん」
「困りますよ~!」
今回の依頼者である彼が、呆れて腰に手を当てていた。
そして手に持っていたノートをばっと広げてオレに突きつけてくる。
「名簿に『理想恋愛屋』なんて書かれても困ります!」
それはこの会場の裏口に入る際、前もってもらっていたスタッフカードのナンバーと名前を書く名簿だった。
「きちんと名前、書いてくださいよ!」
こんな強気の彼は、半月前とは大分イメージが違う。
いや、オレがオトコだからなのかもしれないが。
だけど、もう一つひっかかる。
「……何を、書けと?」
じわり、じわりと嫌な汗がまた一つ背中を流れる。
「なにって……名前、ですけど?」
小首をかしげる彼。
ほら、といわんばかりにポケットからボールペンを出して、ノートと一緒に差し出してくる。