理想恋愛屋
「ちょっと、なにすんのよっ!」


 爆弾みたいにはじけるような、この声は……!


「あんたたちみたいな汚い手で触んな!」

 パシン!と響く。

オレの予想では例の武器を使っていない。


 中を伺うようにそっとノブを回し、数ミリほど扉を開くと、二人の男たちが行方不明になっていた彼女を囲んでいた。

 やはりオレが最後に見たピンクの羽根をまとった彼女。じりじりと壁際に追い詰められている。

男たちは黒のTシャツを着ていて、オレはすぐにこのショーのスタッフだってことは分かった。

どうにかスタッフカードのナンバーが見れないか目を凝らした。


「気の強い女は嫌いじゃないよ、オニーサンたちがイイコト教えてあげる」

 そういうなり、若干背が高い方の男が彼女の腕を掴んで、力任せに壁に押し付けた。

「はる──……っ」

 思ったら最後、扉を思い切り開いて地面を蹴っていた。

男たちと彼女はハッと振り向いてきた。

「あ、葵……っ?」

 不安に揺られているその声が、体の中から何かを沸き立たせる。


「いいから、その子を離せよ」

 奥歯をギリリと噛んで、精一杯威圧するように睨み付ける。

でもこいつらはそれを笑い飛ばした。

「邪魔なのはおたくだよ?」

 ふざけんな!

 頭に血が上って殴りかかるも、簡単に避けられ見事手首をとられて後ろに回されてしまった。

「カレシの前で、ごめんね?」

 彼女を掴んでいた男が、口端を吊り上げて厭らしく笑う。


 カレシでもねぇし、兄でもねぇけど。

己の非力さに、不甲斐なさしか残らない。

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