理想恋愛屋
「ま、待て……っ」

 男が彼女の白い首筋に顔を近づけていく。

どうしてもオレは見ていられなくて、目を背けた。

 

「……どいつもこいつも…」

 薄暗い部屋の中から、地の底より這い上がるように響いた。


「舐めんなああああっ!」

 うっすらと入るすぐ隣の会場から漏れてくる光が、ちょうど彼女を照らす。

おかげでオレは、見てるだけでも痛くなる光景を目の当たりする。


 ゴス、と鈍い音を立てて、男の股間に彼女の膝が直撃していた。


 ううっ……!

おそらくオレを捕らえていた男も同じ思いをしたことだろう。


だが、彼女はその好機を逃すわけもなく、うずくまってる男を跨いでオレの元へと駆け寄る。

「ほら、いくわよ!」

 呆気にとられてたのは、オレの背後に回っていた男も同じだったようだ。

「ま、待てよっ」

 慌てて彼女の肩につかんだおかげで、オレは体が自由になった。

それでも彼女は、ぐらりとよろめいた体を起用に反転させていた。

「危ない……っ」

 せめて彼女が転んだりしないように、と抱きとめようとしたんだ。


「触んじゃないわよ!」

 彼女の手にはいつもの武器が。


 ど、どこから持ってきたんだよ!


 オレの疑問に答えるように、スパァァアンッ!と痛ましい音が鳴り響いた。

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