理想恋愛屋
 オレたちがにらみ合っていると、白いドレスのようなワンピースを片手にデザイナーが一歩出た。

 重いため息が、自然とその場を鎮めた。

「その気持ちは嬉しいけどね、傷なんか出されたらこっちとしても商売にならないのよ」

 鋭いナイフのような言葉に、さすがの彼女も、そして周りのスタッフたちも目をそらした。


 オレには、彼女が『傷物』っていわれた気がしたんだ。

「あの、こいつは……っ!」

 意を決して、ありのままを伝えるつもりだった。

だけど、黙って手のひらだけでその先を遮られてしまった。


 未だ鋭い視線を向けたまま、淡々と彼女に言葉を浴びせる。

「あなたが“プロ”のつもりなら……、わかるわね?」

 彼女はコクンと小さく頷いていた。


 なんだってうまくいかないんだ。

一生懸命にやれることをしているのは、分かってもらえてるのかもしれない。


 悔しい。

 あんな怖い思いをしても、なお、正面から向き合ってやり抜こうとする彼女をみて、オレはなにもできないのか…?



「……早乙女サン、こいつに白の着させてやってよ」

 オレの呟きに、彼が振り向いた。

「え……?」

 一つの閃き。

 ただコレが成功するかは分からないし、彼女たち──いや、スタッフ全員も賛成してくれるわけなかった。

それでも、今は、彼女の想いを無駄にしたくない一身だった。

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