俺の彼女は何か変!
第1章
9月だというのに秋らしさをひとつも感じさせない、まだ強い日差しが頭を照りつける。
『クソッ、あっちぃ。』
夏休みが終わり俺は父親の突然の転勤で
愛知から東京へ越してきた。
やっぱり都会は違う。
俺がいたところも田舎っていう訳ではなかったが、東京をみると差は歴然としていた。
父さんは仕事が残っていたから俺は母さんと先に東京へ行くことになった
朝から満員電車なんて頭がいたくなる。
隙間のない電車に息がつまる。
これから通う学校も毎朝電車に乗っていかなきゃいけないなんてうんざりだ。
『でも来たからには仕方がない!
また1からやってやる!!』
そう自分に言い聞かせて頬を軽くパチンと叩いた。
そして俺達は新しい我が家に着いた。そこはいたって普通の10階建てのマンション。
『へぇー。思ったよりキレイじゃん』
『あたりまえでしょ!お父さんったらアパートでいーよなんて簡単に言うんだから、どれだけマンションにさせるために説得したことか。』
そういって母さんは大きくため息をついた。
母さんは昔から素敵な生活などに憧れを抱いていて特に俺や父さんのことについては口うるさい。
ただ、俺は少なくとも母さん似だから父さんに苦労する母さんの気持ちは少しだけ分かる。
というより父さんはあまりにセンスがなく、いつも服装や持ち物は母が管理しているくらいだ。
もはや壊滅的といってもいい。
しかし、頼りない父だがとても優しくて頭もいい。それに何より母さんと俺のことを大切にしてくれる。
そんなことを考えながらしばらく部屋を見回していると
リビングの方から母さんの呼ぶ声がした。
『さ!お隣さんに挨拶しに行くわよ!』
『俺はいーよ』
『何いってるの。お隣あんたと同い年の子がいるんですって、だから仲良くなっときなさい!』
力強く腕を引っ張る母さんに仕方なく俺はしぶしぶついていった。
ピンポーン
インターホンを鳴らした
すると扉の向こうから『はーい!』と返事が聞こえた。
そしてガチャッと扉が開きニコッと優しく微笑む若い女性が出てきた。
『はじめまして。以前は主人が挨拶に伺ったと思うんですが、隣りに越してきた阿佐間です。』
『あ!阿佐間さんですか!はじめまして、隣の木村ですー』
俺と同い年の子がいるような感じのしない若い女性
は深くお辞儀をしてきた。
すると母もつられてお辞儀を仕返していた。
『母さん?』
そこに1人後ろから問いかける少し低い声がした。
振り返ってみると俺と同い年位の少年が立っていた。
『あら?もしかしてあなたが春馬くん?』
『そう…ですけど…』
その少年は不思議そうに返事をした。
『あ、おかえり春馬。昨日話してたお隣にこしてきた阿佐間さん!と、息子さんの優介くん』
『あぁ…!どうも、はじめまして。息子の春馬です』
少年は軽く頭を下げて挨拶した。俺と同い年にはみえないほどしっかりとした口調だ。そしてまっすぐ伸びたストレートな黒髪は癖っ毛で色素の薄い茶髪の俺からしてあまりに羨ましすぎた。