似非恋愛 +えせらぶ+
「うまく、行かないよね」
「香璃」
斗真が、私を抱きしめる。私はただ、その温かさに身を委ねた。
「……斗真、私……」
「……何も言うな」
額に、温かく柔らかいものが触れた。
ねえ、斗真……私は、貴方の要望が知りたい。
どうして、「慰めてやる」なんて言ったの……?
結局その日、私達はただ抱き合って眠った。
初めて、慰めてほしいと言った斗真だったのにそういう行為をせず、ただ一つのベッドで穏やかに眠った。