似非恋愛 +えせらぶ+
昨日まで、あれだけうだぐだ悩んでもやもやしていた気持ちが嘘のように穏やかな朝だ。何一つ問題が解決していないというのに。
「やっぱりベーコン美味しいよね」
「鉄板だよな」
そんな他愛もないようなことを話していると、驚くほど時間が早く過ぎてしまう。話に夢中になっているうちに私達は、あっという間に食事を終えていた。
「あ、片付けは私がするよ」
「おう」
食べ終わった食器を台所へと持っていく。水を出しながら、私はぼんやり今の状況について考えた。
あまりにも普通で、あまりにも穏やかで、優しい時間について。
まるで、自分が許されているような錯覚を覚える。
傷ついた心を癒すために斗真を利用している自分が、許されているかのように勘違いしそうになる。
愚かにも、実は私達は相思相愛で一緒に暮らしている、そんな感覚にさえ陥ってしまう。
片づけた後、ソファでのんびりしていた斗真の隣に座る。私は斗真を見た。