似非恋愛 +えせらぶ+

「……香璃?」
「ん?」

 斗真の呼びかけに、いったん停止した思考を現実に引き戻す。

「どうした?」
「え?」
「ぼんやりしてるぞ」

 斗真が人差し指で私の額を押す。

「い、いや……斗真とは、幼馴染だったんだな、って……」

 呆けたように言った私に、斗真が笑う。そして、私を抱き寄せた。

「いや、違ったな」
「ん……っ」

 私の顎に触れて顔を上に向かせた斗真が、突然唇を重ねる。その瞳が悩ましげに細められ、離れた唇がいたずらに歪められた。
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