似非恋愛 +えせらぶ+
「付き合ってるんだったな」
違う。
付き合っている、ふりをしている。
思わず泣きそうになる私は、必死に涙をこらえた。そのせいでひどく顔が歪んでいるに違いない。
そんな私の様子に、間近にいる斗真が気付かないはずがなかった。
「……あいつのこと、忘れられないのか?」
「え」
「より、戻したいと思ってるんじゃないのか?」
斗真が、私から離れた。
「俺に遠慮なんかするな」
行きたかったら、行けばいい――そう、言われている気がした。
結局、私は真治のことを吹っ切れていなかった。それなのに、斗真とややこしい関係になってしまい、正常な考え方ができていなかったのかもしれない。
でも、こうして斗真と話をして、穏やかな時間を過ごして――真治のことは、私の中で結論が出た気がした。
「……多分、悔しいのよ、私」
私はそっと、息を吐いた。