似非恋愛 +えせらぶ+
「ん……とう、ま……」
「香璃、俺だけ見てろ」
斗真、なんでそんなこと言うの。
「香璃」
そんな、甘い声で私の名前を呼ばないで。
「そばにいてやる」
そんなに切ない声で、言わないで。
そんな心とは裏腹に、斗真のことを求める素直な気持ちがあふれ、自分の口から暑い吐息が漏れるのを感じていた。
斗真が、欲しかった。
私の空虚な心を、埋めてほしかった。
斗真の口が移動し、私の首元にうずまる。私も応えようと体制を変えたときだった。突然、耳慣れた着信音が鳴り響いた。びくりと体を震わせ、二人して硬直した。
はっとした私は思わずスマホを取った。実家からの着信だ。