似非恋愛 +えせらぶ+
昔、まだ私達が幼かった頃、いつも一緒に学校に通っていた。
今私達が歩いているこの道も、何度も一緒に歩いた思い出の場所だ。
大人になった私達が、こうしてまた同じ道を歩いているのは、なんだか不思議な気分だった。
住宅街を少し入ると、小学校がある。そこが、私達が通った母校だ。斗真が少しはしゃいだ様子で柵に寄り掛かって中を覗き込んだ。
「おーっ、懐かしいな」
「本当ね」
「香璃、あそこのブランコで怪我したことあったよな」
斗真に言われて、私は首をかしげた。そんなこと、あっただろうか。
「そうだっけ?」
斗真が、呆れたように私を振り返る。
「覚えてないのかよ……」
そんなことを言われても、覚えていないものは覚えていない。
斗真は苦笑して、再び歩き出した。私もその後に続く。
そこから、上り坂になる。私達の家は、この坂を上った高台の区域にあった。
「この坂、馬鹿みたいに走って登ったりしてたよなぁ」
「馬鹿みたいに走ってたのは斗真だけよ」
その時の光景を思い出して、私はそっと目を閉じた。