似非恋愛 +えせらぶ+
「さ、着いた」
斗真の言葉に、はっとしてつないでいた手を放す。
いつの間にか実家の前についていた。
「香璃ん家、そのまんまだな」
斗真が少しだけ寂しそうに言ったのは、きっと隣にあった斗真の家が、今はもうないからだ。
「さ、入ろうか」
自分の家があったところに、別の家が建っているのは、きっと切ない気持ちになる。絶対に淋しい気持ちになる。
だから私は急かすように斗真の背を押して、玄関のかぎを開けた。
「ただいまー」
扉を開けると、子供達のにぎやかな声が聞こえてくる。
「ほら、香璃帰ってきたよ」
「あーっ、かりちゃーんっ!」
だだだっと小さな足音が玄関に走ってきた。そして飛びついてきた小さい身体を、私は抱き留めた。
「由紀、久しぶり」
私を見上げてくる由紀の頭をなでる。そして少し遅れて、てててっと出てきたのは拓弥だ。