似非恋愛 +えせらぶ+

「人見知り?」
「んー、そうかも。さ、どうぞどうぞ中入って。お母さーん、珍しい人が来てるよー」

 由宇が奥にいるお母さんに声をかける。とりあえずリビングに入ると、お母さんも目を丸くした。

「あらっ、斗真君!?」
「ご無沙汰しています。これ、つまらないものですが」

 こっちに来る前に手土産として買っていた焼き菓子を、お母さんに手渡す斗真。

「あらあら、まあまあ、斗真君、すっかり男の人になっちゃったわねぇ……でも、今日はどうして?」

 絶対に訊かれると思っていたこと、なんで斗真がここにいるのか。

 まあ、想像通り、早々に訊かれた。

「うん、実は、えーっと……」
「俺、2年前に帰国したんですけど、こっちで就職したんですよ。そしたら、偶然職場で再会して」

 私の言葉を遮って、斗真が代わりに応えた。
 職場で再会した、というのは少し違うが、わざわざ詳細を教える必要もない。うまく説明してくれた斗真に内心感謝した。
 由宇が不服そうに口を尖らせる。

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