似非恋愛 +えせらぶ+
「そっか、別れちゃったのね。香璃ちゃんと真治君は、ご縁がなかったのね。それなら仕方ないわね」
優しくそう言ってくれるお母さんの言葉に、私は泣きそうになった。そんな私の足元に温かいものがくっつく。
「かりちゃ、いたた?」
いつの間にか拓弥が私のところに来て、心配そうに私を見上げていた。私は拓弥を抱き上げた。
「痛くないよ、拓弥。ありがとうね」
私はこんなにも、優しい人達に囲まれていたんだ。
真治とのことがあったとき、すぐにこうしてお母さんと話ができていたら、もしかして私と斗真はこんなにこじれた関係になることなく、ただの幼馴染として再会できていたんじゃないだろうか。
そんなふうに思ってしまい、胸の奥がぎゅっと痛む。
「そっかぁ……別れちゃったのか。それなら仕方ないね。で、斗真は? 結婚したの?」
由宇が斗真に訊く。