似非恋愛 +えせらぶ+

「いや、俺も最近彼女と別れたばっかりで」
「あらぁ、それならいっそのこと、香璃と斗真君が付き合っちゃえばいいのに。あら、もしかして実は?」

 お母さんの無邪気な言葉に、頭が痛くなる。同時に胸も痛くなる。

「ちょっと……お母さん」
「実は、そうなんですよ」

 え?

 否定しようとした私の言葉を遮る斗真の突然の肯定の言葉に、私は目を剥いた。

「なんだ、そうだったの? それなら早く言ってくれればいいのに!」
「やだっ、お父さんになんて伝えましょう」

 由宇とお母さんが嬉しそうにはしゃいでいる光景を見て、私は言葉を失う。
 いったい、この状況をどうやって納めればいいというんだろうか。

 突然はしゃぎだした母親と祖母を見て、子供達も困惑している。
 でも、由紀と拓弥以上に、私が大混乱を起こしていた。

「でも、斗真君なら、安心だわ。本当に、あの小さかった2人がねぇ」

 私は困り果てて隣の斗真を見た。斗真は涼しい顔で私を見て笑っていた。
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