似非恋愛 +えせらぶ+
「なあに、見つめ合っちゃって……。へえ、香璃と斗真がねぇ……。でも、なんか嬉しいね」
由宇もお母さんと一緒になって笑っている。
「そういうことにしておけよ」
私を少し抱き寄せ、私にだけ聞こえるように、斗真が耳元でささやく。
私は驚いて斗真を見た。
「いでっ」
すると突然、私の膝にのっていた拓弥が斗真の顔を小さな手でたたいた。
「あっ、こら、拓弥!」
由宇が怒るが、拓弥は小さな頬を膨らませて、怒ったような顔をして斗真を見ている。
「拓弥、どうしたの?」
「めっ、かりちゃ、ぼくの!」
そう言って、斗真にあっかんベーをする。
「お前……」
その可愛い拓弥の様子とやり場のない怒りに苦笑いしている斗真に、思わず笑ってしまった。