似非恋愛 +えせらぶ+

 いろいろ、変わらないものだと思っていたけれど、やっぱり変わらないものなんてなくて、由宇も私達と同じで大人になっていた。

「でも、変な感じ。また、こうやって斗真がうちにいてさ、いつの間にか大人になってて、お父さんのお酒飲んでるなんて」
「うん、本当に変な感じ」

 私はぼんやりと斗真を見つめる。お父さんにお酒を飲まされて、たじたじになっている斗真が面白い。

「香璃」
「ん?」
「大丈夫なの?」

 私は由宇の方を見た。由宇は、何を考えているかわからない無表情で、私を見ていた。

「何が?」
「無理してない?」

 核心を突くような由宇の言葉に、私は口をつぐむ。何を言ったとしても、ごまかせない気がした。

「言いたくないならいいんだ。でも、辛くなったらさ、私はいつでも聞くからね」

 由宇の言葉に、私は頷いた。

「うん、ありがとう」

 どこまで、由宇はわかっているのだろうか。
< 134 / 243 >

この作品をシェア

pagetop