似非恋愛 +えせらぶ+

 幼い私は、斗真に想いを告げることもできずに、好きという気持ちを無くしてしまった。それを、今こうして告げることができた。

 こうして初めて、私は過去と、斗真と、向き合えたような気がした。

「斗真が突然いなくなって……本当に悲しかった。だって、好きだったから」

 信じられないほどに素直に、私はかつての自分の想いを伝えていた。

「あーっ、すっきりしたっ!」

 私は背伸びをして、斗真を見た。
 ここ最近悩んでいたのを忘れられるくらい、晴れやかで穏やかな気持ちのまま、斗真を見ることができた。

「ありがとう、私の幼馴染でいてくれて」

 これで、私はひとつ前に進んだ。

「いつも、私を慰めてくれて、ありがとう」

 偽りの関係でも、斗真がそばにいてくれる。
 だからこそ救われたことも確かにあったんだ。

 いくら、悩ましいほどに複雑で、混乱した関係であったとしても、それでも斗真に私は救われているのは確かなんだ。

「さ、寝ましょう」
「……ああ」

 斗真が、そっと離れる。
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