似非恋愛 +えせらぶ+
フェーズ9

転機


 家から会社のカレンダーにアクセスして、スケジュールを確認し、内見の予定を入れるために小城君にメールをした。

 そして私は荷造りを進める。

 すでにベッドは処分していて、床の上に布団を敷いて寝ていた。ソファやテーブルやいすも、全部処分した。

 どんどん荷物がなくなっている部屋に、寂しさが募る。


 真治を見かけてから、私達は食事をする気にもならず、私は送るという斗真の申し出を断って帰路についた。
 別れ際の、何か言いたげな斗真の顔が気になった。

 斗真との時間は楽しい。癒されるし、落ち着く。でも、甘えていちゃいけないとも思う。

 本当は、何も考えずに身を投げ出して斗真に甘えたい。
 だけどそれをしてしまったら、私が斗真に溺れて、好きだと気持ちをぶつけてしまったら……きっと二度と幼馴染の関係には戻れない。

 あの日、斗真がいなくなったあの日のような気持ちは二度と味わいたくなかった。私は幼馴染である斗真を失いたくなかった。

 そうするためには、斗真との偽りの恋愛関係をリセットするべきだと思った。
< 172 / 243 >

この作品をシェア

pagetop