似非恋愛 +えせらぶ+
* * *
仕事を早めに切り上げて、小城君と駅で待ち合わせた。駅に着くとすでに小城君が待っていた。
「小城君、お待たせ」
小走りで駆け寄って声をかけた。
「おっ、お疲れ様」
スマホを見ていた小城君も私に近づいてきた。私の服装を見て、小城君は首をかしげる。
「あれ、仕事は私服?」
今日はお客様とのミーティングがなかったので、私服だった。IT系企業にありがちだが、他業種の人に驚かれることが多い。特に小城君のようにスーツでお仕事している人には。
「うん、小城君は常にスーツ? 大変だね。私もミーティングの時にスーツ着るけど、肩凝るよね」
「まあ、でも慣れちゃってるしなぁ。夏場の内見は辛いけど」
「うわ、夏場のスーツ、地獄」
私達は目的地に歩き出す。スマホを覗きながら、小城君が口を開く。
「駅から5分は魅力的だよね」
「確かに、夜遅いことが多いから」
最初のところは、本当に駅からすぐだった。駅からの道もわかりやすい。