似非恋愛 +えせらぶ+
「ありがとう、小城君、凄く丁寧に見てくれるからわかりやすい」
お礼を言うと、小城君はにっこり笑う。
「いいえいいえ、お仕事だしね。でも、篠塚さんのお役にたてて嬉しいよ。次のところ行こうか」
「うん」
次のところも小城君がいろいろ確認してくれて、アドバイスをくれた。いろいろ見て考えた結果、一つ目のところがよさそうだった。
「今日は付き合ってくれてありがとう」
駅で別れようとしたところ、小城君が少し考えるような顔になる。
「どうかした?」
私が訊ねると、小城君は少しだけ照れたように口を開いた。
「ここまではお仕事だったけど、これから食事でもどうかなと思って」
「えっ、うん、いいよ」
思わず快諾してしまったけど、ここからだと家が少し遠いなと考えた。
「じゃあ、ここ行こうよ。行ってみたかったんだ」
小城君がスマホの画面を見せてくれた。熟成肉のお店で、最寄駅はうちの近くだった。
「あ、ここ……」
「篠塚さん家近いよね。俺の家もアクセスしやすいから。ちょうどいいやって思って。さ、行こう」
さりげない気遣いが嬉しくて、どきっとする。私は小城君に続いて駅に向かった。
「でも、よく覚えてたね、私の家」
「そりゃあ不動産屋ですからね」