似非恋愛 +えせらぶ+

「……本当に、訊きにくいことを訊くのね……」
「ん、まあ、言いたくなかったらいいけど」
「浮気されたの」

 別に隠す必要もない。肩をすくめた私は正直に答えた。口に運ぼうとしてた小城君の箸が、ぴたっと止まった。

「は、なにそれ、最低」

 不快感を顕わに言う小城君を私は意外に思った。そういえば今まで真治の話をして、話を聞いてくれる人はいたけど、感情を顕わにする人はいなかった。

「浮気とか最低。篠塚さん、そんな男捨てて正解」
「……うん、ありがとう」

 ちょっと、胸がすっとした。

「小城君って、大学時代は近寄りがたかったんだけど、優しいんだね」
「そんなに近寄りがたかったかなー?」
「そりゃあ、金髪でカラコンで派手だったし……」

 記憶を辿って小城君の昔の姿を思い出すけど、やっぱり、お近づきになりたいタイプじゃなかった。

「え、じゃあ今は?」
「ん?」

 にこっと微笑む小城君に、私は首をかしげた。
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