似非恋愛 +えせらぶ+
「え、特に何も……斗真、本当にどうしたの?」
どう考えても、今日の斗真は様子がおかしい。
「何もないならいい。なんか食うか?」
「ううん、もう食べた……」
「そうか、送る」
送るって……。
いつも一人で通勤している道だというのに。
「いや、本当に別にいいよ……?」
今日の斗真は本当にいったいどうしたというんだろうか。
いつもと様子の違う斗真に戸惑いしか覚えず、思わず身構えてしまう。斗真の考えが全く分からない。
「……香璃の顔が見たくなった、それだけじゃ駄目か」
「っ!」
斗真がぼそっと小さく言った言葉に、私は息を呑んだ。
「と、斗真? あの……こんなこと言うのはなんなんだけど……、何か変なものでも食べたの……?」
斗真は顔をしかめて私のおでこを叩いた。
「痛い……」
「言うに事欠いて、それはないだろう」
「だって、斗真おかしいよ……?」
斗真は舌打ちをすると駅の方へと歩き出した。