似非恋愛 +えせらぶ+

「……香璃……お前……」
「だから、待ってって言ったのに」

 がらんと広い寝室。
 フローリングの上に置かれた布団。
 ただ、それだけしかない寝室だった。


 これが、今の私の現状だった。
 しんと音が鳴るように静かで、何もない殺風景な部屋。

 私は毎晩そこで独りで過ごしていた。

 1つ1つ荷物を片付けるたびに、真治との思い出を捨てられた。
 がらんどうの部屋を見るたび、ひとりで生きなくてはいけないと決心できた。

 何もない、持っているものを捨てようと決心した、等身大の私を投影した部屋だった。


 私を抱えていた斗真の手が緩む。

「ご、ごめん、色気も何もない部屋なの……」

 胸のうちまでなにもかもを見透かされたような気持ちになって、恥ずかしくなって俯いた私を斗真が力強く抱きしめた。
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