似非恋愛 +えせらぶ+

「斗真……」
「なあ、香璃……俺が慰めてやる」
「え」

 視界が反転し、気づけば私は斗真に組み敷かれていた。

「……斗真……?」

 斗真の顔を見上げて、私は言葉を失う。

 斗真は今にも泣きだしそうな、悲痛な表情を浮かべていたのだ。


 ねえ、斗真、いったいどうしてそんな泣きそうな顔をしているの?
 そんなに顔を歪めて、いったい、どうしたというの……?





 私は、無意識に斗真の頬に手を当てた。

「我慢しなくても、いいんだよ……?」

 なんでその言葉が出たのかはわからない。でも、自然とそう口にしていた。斗真が私を見て目を見開いたのが分かった。
 そして、泣きそうに歪んでいた口元に、笑みが浮かぶ。

 それは見ているこちらがつらくなるような、悲しくて切ない笑みだった。

「香璃……」
「ねえ、斗真、どうしたの? 今日はなんかへ……んっ……」

 斗真に口をふさがれ、言葉を遮られる。


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