似非恋愛 +えせらぶ+
どこか様子のおかしい、必死な斗真の手によって、私は官能の海に溺れて何も考えられなくなった。
翌朝、目が覚めると斗真の姿はなくなっていた。
まるで夢だったんじゃないかと思うほど、斗真の形跡はなく、私の現状である空っぽの部屋しか、そこにはなかった。
斗真の気持ちは、私にはわからない。
なぜ、あんなにも泣きそうな表情を浮かべていたのかも、私にはわからない。
ただ、確かに過ごしたはずの一夜は、私の心に小さなしこりを残した。