似非恋愛 +えせらぶ+
* * *
パソコンを起動して、立ち上がりのロゴを眺めながら、パスワードを入力してEnterを押した。
今日も一日が始まるというのに、気分が乗らない。
昨日の斗真の表情が頭から離れなかった。斗真の考えていることが全く分からない。斗真はいったい、何を考えて私を抱いたのか。
私の中の熱が、ふっと蘇るように、私を混乱させる。
最初からわからなかったんだ、斗真の気持ちは。
再会したあの時からずっと、斗真の気持ちは、私にはわからない。
なんで慰めてくれるなんて言ったのか。
なんで偽の恋愛関係になろうと言ったのか。
なんであんなに優しくしてくれたのか。
なんで私の家族にまで嘘をついたのか。
なんで私に会いに来てくれるのか。
なんであんなに泣きそうだったのか。
考えれば考えるほど、斗真の気持ちがわからない。
「はあ……」
「おうおう、篠っち、朝からため息なんかついて。どうした」
思わず出たため息を木戸さんに見られ、突っ込まれる。
「あ、木戸さん、おはようございます」
「おう、おはよ」
木戸さんは朝から爽やかだ。