似非恋愛 +えせらぶ+

「私も、そう思います」

 彼氏は、きっと頑張れば作れると思う。
 でも幼馴染みは、頑張っても作れるものじゃない。

「私、中学生の頃、ずっと幼馴染みのことが好きだったんです」
「ふうん?」
「でも、彼は海外に行ってしまって、ずっと会っていませんでした。その彼と、最近再会したんです」

 私はそこでため息をつく。

「お互い大人になっていて、ちょっと複雑な関係になってしまって……でも、私は、大事な幼馴染みをなくしたくない」

 そうだ、口にしてやっとわかった。
 私は斗真を、大事な幼馴染みを失いたくない。

「そうだな……それなら、適度な距離を保つしかないだろうな」

 そう、わかってる。
 今の、この、お互いを慰め合うような偽物の恋愛関係は終わらせなくてはいけない。

 斗真と、ずっと、幼馴染みでいるために。

 斗真の気持ちはわからない。でも、私は斗真と幼馴染みでいたい。
 これからも長く続く人生のうち、昔のことを語り合えるような友人でいたい。
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