似非恋愛 +えせらぶ+
「木戸さん、ありがとうございます」
「ん、なんか、わからんが、あんま考えすぎるなよ? 篠っち、すぐ思い悩むからな」
「はい、ありがとうございます」
私の気持ちは、決まった。
今夜、斗真に、今のこの関係の終りを告げる。
そう、決めた。
* * *
帰宅した私は、部屋着に着替えた。
何もないこの部屋に帰ってくると、まっさらな気持ちになったかのように思える。
一つため息をついて、布団に寝転がった。
その時、スマホが着信を告げる。確認すると、由宇からだった。
「もしもし?」
『もしもし、香璃、今大丈夫?』
由宇からの電話なんて、珍しい。
「どうしたの、何かあった?」
『ううん、なんでもないんだけどね。元気にしてるかなと思って』
由宇の言い分に笑ってしまう。