似非恋愛 +えせらぶ+
震えそうになる声を、プライドが押さえつける。
大人の女でいたいから、物わかりのいい女でありたいから。
「斗真に凄く助けられた。失恋の傷も癒えた。本当に感謝してる。でも、もう、終わりにしようよ。お互いのために」
お互いのため。
お互いが、新しい一歩を踏み出すため。
そして、私達がかけがえのない幼馴染みという関係に戻るため。
「もう、終わりにしましょう、慰め合いは」
『……わかった』
そうして、私達の偽物の恋愛関係は終わり、私と斗真は幼馴染みに戻った。
「斗真、今までありがとうね。また、ご飯でも行きましょう」
『ああ』
電話で告げた別れは、あまりにも呆気なかった。
ぽっかりと心に穴が開いたような、逆に何か満たされたかのような、ふわふわした気持ちになった。
「じゃあ、おやすみなさい」
私は、偽りの恋人としての電話を終える。