似非恋愛 +えせらぶ+

「……っ」

 私は天を仰いだ。
 自然と、涙が出てくる。

 そうか、斗真との時間を過ごすうちに、やっぱり好きという気持ちを思い出していたんだな。
 だって、斗真は優しかったから。物凄く優しかったから。

 何を考えているかわからなかったけれど、斗真は優しかった。私を慰めてくれた。私は癒された。
 大好きな幼馴染みは、本当に頼りになる男だ。

 いつのまにかに積もり、抱いていた淡い感情を洗い流すように、私は静かに涙を流した。













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