似非恋愛 +えせらぶ+
* * *
それを聞いたとき、私は息を呑んだ。
「それ、本当?」
「はい」
少し照れたように俯くみあの頬は、少し赤らんでいた。
みあに誘われたランチで、みあは、氷田君と付き合うことを決めたと教えてくれた。
あれだけ悩んでいたみあが、ようやっと下した決断に、胸が張り裂けそうになるくらい、切ない気持ちと嬉しさがあふれだした。
「本当に、良かったね」
頭の片隅で木戸さんの笑顔が浮かんだけれど、それでも、ようやく決断したみあに賞賛を送りたかった。
「はい、たくさん悩みました。でも結局、陣がいなかったら今の私はいなかったと思ったんです」
みあは静かに気持ちを教えてくれた。
「木戸さんへの想いは、やっぱり憧れでした。想像してみたんです、木戸さんのいない世界と陣のいない世界を。そうしたら、やっぱり、陣のいない世界は想像できなかったんです」
氷田君のいない世界を想像してみた、か。
なんだか、みあらしい。