似非恋愛 +えせらぶ+
「私も、ちゃんとしなきゃ」
頭の中に浮かんだのは、小城君の告白だった。もう、答えを先延ばしにする理由はない。
可愛いと褒めてくれて、悪い気がしなかった。むしろ嬉しかった。
『女の子』として扱ってくれた。
ただそれだけの些細なことが、大人になった私にとって嬉しいことだった。
「前向きに、考えよう」
小城君と向き合ってみよう。
きっと、私だって幸せを掴める。
悩んで、傷ついて、泣いた。
その時間はきっと無駄じゃなかったし、傷つくのが怖かった私だって前に進めた。
傷つくことは痛いことだと知っている。だけど、怖がっていちゃ何もできないことも知っている。
斗真との関係にだって、結論を出せたんだ。
「大丈夫、私は前に進めてる」
自分で自分を励まさないと、誰も励ましてなんかくれない。
「頑張れ、香璃」
ぴしゃっと両頬を叩いて、私は気合を入れなおした。