似非恋愛 +えせらぶ+

「凄い、これじゃあわからないね」
「うん」

 私達は笑いながら次の水中トンネルに向かった。青いトンネルの中を歩いていると、本当に海の中にいるみたいだ。
 さまざまな魚たちが群れを成して泳いでいたり、ウニが転がっていたり足の長い蟹が歩いていたり、巨大なジンベイザメが悠々と泳いでいたり。

「……はあ、凄い」
「こういうの見るとさ、小魚とか食べられちゃわないのか心配になるんだけど、俺だけ?」

 小城君の言葉に、私も頷いた。

「わかるよ、完全に食物連鎖できてるもんね。でも、どこかで見たけど、餌をちゃんとあげておなか一杯にしておくと食べないとか」

 どっかで聞いたことがあるような話を伝えてみる。

「へえ、そうなんだ。でも、目の前を美味しそうなのが泳いでたら、別腹とかになりそうなのに」
「別腹って……」

 言い回しがいちいち面白くて笑ってしまう。

「えー、俺だったら食べちゃうよ」
「食いしん坊なんだね」
「うーん、俺だけじゃないと思うんだけどなぁ……あ、イルカショーの時間だよ、行こう」

 スマホで時間を確認した小城君に導かれて、イルカショーの会場に向かった。

「やっぱり、人多いなぁ……あっ、あそこ空いてる」

 うまい具合に2つ席が空いていて、そこに座った。ちょっと冷たい椅子の感触に懐かしさを感じて、目の前の大きなプールを見る。
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