似非恋愛 +えせらぶ+

「おー、またまた盛大なため息ついて」
「木戸さん」

 リビングのソファに座っていた私の隣に、木戸さんが腰かける。

「なんだなんだ、例の幼馴染みか?」
「ええ、まあそうなんですけど……。距離を取ろうと思ったのに、相手が近づいてくるみたいな……」

 私のぼやきに、木戸さんは苦笑する。

「まあ、あんまり思いつめないようにな」
「はい……ありがとうございます」

 私はため息をついて、仕事に戻るために立ち上がった。



 小城君との待ち合わせの時間が迫り、私はきりのいいところまで仕事を済ませて、帰り支度を始めた。
 お手洗いによって、化粧を直す。そこにみあが入ってきた。そして少し微笑む。

「もしかして、デートですか?」
「まあ、そうともいうかもね」

 照れ隠しで、何でもない風を装う。するとみあは、可愛らしい笑顔を向けてきた。

「じゃあ、やっぱり後石さんは香璃さんのことを待ってたんですね」
「え?」

 後石って、斗真のことだよね?

「どういうこと?」

 私の反応に、みあはあれ、と小さくつぶやく。

「さっきコンビニに行ったんですけど、オフィスの前で後石さんが待っていらっしゃったから、香璃さんを待ってるのかなって思って……」

 みあの言葉に、私は驚く。今日は用事があることを伝えたはずだ。オフィスに来るなんて聞いていない。
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